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2021.09.29

いきものAZ コラム企画『いきものがたり』水族館ファン・ライターX

2021.09.29

※こちらは過去に【いきものAZ】内で公開されたコラムです。

いきもののスペシャリストに、いきものについてのコラムを書いていただく本企画。

今回は・・・、

いきもの全般大好き!とくに水族館が好きなライターXさんに、7月9日(木)にオープンが決まったサンシャイン水族館の新クラゲエリア「海月空感(くらげくうかん)」について取材していただきました!

圧倒的な癒し&没入感を体験したい!サンシャイン水族館に新クラゲエリア「海月空感(くらげくうかん)」がOPEN!!!

今年の夏も猛暑らしい…そんな話題に気が滅入っていたところ、嬉しいニュースが舞い込んできました!新エリアが誕生すると聞き、向かった先はサンシャイン水族館。2011年の全館リニューアル、2017年の屋外エリアリニューアルに続く大型リニューアル第3弾「海月空感(くらげくうかん)」のオープンに向けて着々と準備が進んでいる中、飼育スタッフの杉本さんにお話を伺うことができました。

(取材:6月中旬)

●杉本さん、よろしくお願いします!さっそくですが「海月空感」とは何ですか?

「海月空感」とは「癒し」をテーマにしたクラゲの展示空間で、まるでクラゲが漂う海の中に迷い込んだかのような圧倒的な没入感をお楽しみいただけます。水槽の構造や水流、BGM、香り、照明などを駆使して、より深くクラゲの魅力を体感していただけるような演出にこだわりました。それではご案内いたします。

ありがとうございます。圧倒的な没入感!?好奇心をそそられます。見どころはどのあたりですか?

大きく分けて2つあります。1つ目は、新たに設置した2つの水槽。「海月空感」の目玉でもある横幅約14mの巨大水槽「クラゲパノラマ」と横幅約4mの「クラゲスクリーン」です。2つ目は従来からあったクラゲ水槽のリニューアルです。

●わぁーすごい数のクラゲ♪約14mの水槽とは圧巻ですね!

以前から、業界に先駆けてクラゲのトンネル水槽などを導入していた当館ですが、今回もクラゲの水槽としては日本最大級の横幅のものを作りました。この「クラゲパノラマ」は、クラゲたちに包まれているような没入感が特徴で、天井には水の波紋を投影する演出照明もあり、クラゲと一緒に海中で揺らいでいるような気分になれるんです。照明を白一色にしているので、とても落ち着ける空間になっています。

●・・・あまりにも幻想的で、一瞬言葉を失ってしまいました。隣の水槽も、長い触手がまるで生きたアート作品のよう。

そうなんです。こちらの「クラゲスクリーン」はクラゲの長い触手の美しさを鑑賞していただきたいという思いから誕生した水槽です。アカクラゲの優雅にたなびく触手が、ゆらゆらと水槽の縁に写り込んでとても幻想的だと思いませんか?

●たしかに。そしてクラゲの優しい丸みと水槽の曲線がよくマッチしていますね!この2つの新しい水槽のおすすめの鑑賞法はありますか?

正面のソファにぜひ座ってみてください。クラゲの世界観を表現したBGMや清涼感と癒しを連想させる香りとの相乗効果で、水中の世界に引き込まれるような不思議な没入感を体験できると思います。ゆったりと浮遊するクラゲたちの姿を眺めながらクラゲの拍動のリズムに身を委ねていると、時間が経つのも忘れてリラックスできますよ。

●ソファから眺める“引き”の景色、とても気持ちいいです!ところで、以前からあったクラゲ水槽はどこが変わったのですか?

クラゲトンネル、クラゲルーペ、クラゲドロップ、夢幻海月(むげんくらげ)と新たに名付けられた4つの水槽は、空間全体を反射の良い鏡面仕様にし、照明も以前のカラフルなものから単色へと変更、クラゲ本来の美しさを最大限に引き出す演出になっており、「海月空感」の世界観に生まれ変わりました。

●まるで宇宙船みたい。こちらもまたフォトジェニックな空間ですね!

そうですね。非日常感を味わっていただければ嬉しいです。お隣のカラフルで活動的な大水槽「サンシャインラグーン」に対して、こちらの「海月空感」は安らぎの空間。そのギャップも楽しんでいただけたらと思います。

●最後に、何か一つ、クラゲのトリビアを教えてください!

水槽に近づいてみると、クラゲの傘の中心がほのかにオレンジ色に発光しているように見えるのがわかりますか?これ、クラゲが食べた餌です。アルテミアという動物性プランクトンの色が透けて見えているんですね。餌を与えるタイミングは午前と午後の2回あるので、運がよければこのオレンジ色に光るクラゲが見られるかもしれません!

このクローバーみたいな形のところですね。キレイな色♪杉本さん、本日はありがとうございました!

想像以上にたくさんのクラゲに最初は驚きましたが、「海月空感」体験後は心も体もなぜかスッキリ♪涼しげにゆったりと浮遊するクラゲたちにはリラックス効果があるのかもしれません。次は「海月空感」の裏側のお話などを聞きたいと思います。

 

サンシャイン水族館の新クラゲエリア「海月空感(くらげくうかん)」の日本一(?)狭い水槽の裏側&クラゲ飼育用水槽に潜入!!!

 

神秘的な「クラゲパノラマ」の美しい光景は一体どのようにして作られているのでしょうか。その裏側をのぞいてみたい気持ちを抑えきれず、またまた飼育スタッフの杉本さんにお話を伺うことにしました!(取材:6月中旬)

●杉本さん、よろしくお願いします。今日は「海月空感」の裏側の話や苦労した点などをお聞かせください!「クラゲパノラマ」の巨大水槽の搬入も大変だったと聞きましたが。

そうなんです。大きすぎてエレベーターで搬入できなかったので、3分割されたものを1枚ずつ水族館のあるビルの屋上までクレーンで吊り上げました。

その後、現場で3枚の巨大なアクリル板をつぎ合わせて横幅約14mの水槽を完成させました。

●スケールが違いますね!前例のないサイズの水槽でのクラゲ飼育ということで、気をつけた点はありますか?

「クラゲパノラマ」の水槽は奥行きが1mくらいしかないのですが、約40tの水が入ります。その中で365日クラゲを満遍なく浮遊させないといけないので、クラゲの数が必要です。そのため繁殖も重要な仕事の一つなんですね。バックヤードをご案内しましょう。どうぞこちらへ。

ここが「クラゲパノラマ」のバックヤードで、主に設備関係とクラゲの繁殖用水槽があります。

●配管だらけ!工場みたいですね。青い水槽がたくさんありますが、これは?

 

ミズクラゲの繁殖用水槽です。全部で6つ、それぞれに200~300匹ほど入っています。「クラゲパノラマ」には1,000~2,000匹ほどのミズクラゲを入れることを想定しているのでこちらで繁殖を行っています。クラゲは不思議な生活史をもつ生き物で、浮遊生活を行う「プラヌラ幼生」を経て「ポリプ」となり、岩などに付着して生活します。その後、お皿が何枚も重なったような姿の「ストロビラ」となり、そのお皿一枚一枚が「エフィラ」と呼ばれる直径2~3mm程の小さなミズクラゲとなります。

●てっきり、卵からミニチュア版クラゲの赤ちゃんが産まれてくるものと思っていました!

そう、皆さん驚かれますね(笑)。この透明な小さな水槽でそれぞれの成長過程ごとに飼育しています。目に見えないほど小さな状態から時間をかけて大切に育てているんです。

●クラゲは思った以上に繊細な生き物なんですね。ところで「クラゲパノラマ」のバックヤードはどこですか?

 階段の上に、大人が屈んでようやく通れるくらいの狭い入り口があるのわかりますか?頭上注意!!!のテープがそこかしこに貼られていますが(笑)

その先が奥行き40cmほどしかない水槽のバックヤードになっていて、しゃがんだままの姿勢で餌やりや水槽の調整などの作業を行います。おそらく日本一(?)狭いバックヤードではないでしょうか・・・

●しゃがんだ体勢での作業はなかなかハードですね・・・バルブや照明がたくさん見えますね。

 

クラゲは自分では浮き続けることができないため、水流を作らないと水槽の底に沈み死んでしまいます。クラゲが均等に漂う状態にするために、この40個以上の赤いバルブで水流を調整しています。また水槽の中に海の無限の広がりを表現したいので、壁に光が当たらないように照明の使い方にも気を使います。試行錯誤を繰り返しながら、日々、微調整を繰り返しています。

●飼育から設備管理まで、大忙しですね。最後に、杉本さんが思うクラゲの魅力を教えてください!

クラゲはまだまだ解明されていないことの方が多い生き物なんです。とても受動的な生き物で脳も心臓もない。自分から餌も獲りに行かない、水流に逆らうこともできない。愛情を注いでも返ってこないのですが、そこが逆にたまらなく可愛いんですよね。

私は子供の頃から海の生き物が大好きでよく父に海に連れて行ってもらっていました。中学の頃から飼育員になりたかったので、今は入社5年目で大変なことも多いですが、とても充実しています。毎日クラゲに癒されていますよ。

●子供の頃を夢を叶えたんですね!素敵です。今後やりたいことを教えてください。

今後は、まずクラゲの自家繁殖を軌道にのせ、この新しい展示を安定的に管理していくことが目標です。ゆくゆくは、まだ見ぬ美しいクラゲを展示するなど、クラゲの魅力をより多くの方に知っていただけるような活動をしていけたらと考えています。サンシャイン水族館公式Twitterでは、私目線でのクラゲの展示や繁殖に関する投稿をしています。#毎日海月で検索してみてください!

繊細なクラゲの命を預かり育て、機械設備を管理し、いかにクラゲを魅力的に展示するかというエンターテイメント的な要素も求められる。この美しい水槽は、愛情あふれる多才なスタッフさんに支えられているんですね。「海月空感」のオープンおめでとうございます。杉本さん、ありがとうございました!

 

 

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