TOPへ戻る

2021.10.06

いきものAZ コラム企画『いきものがたり』 カワウソ

2021.10.06

 

※こちらは過去に【いきものAZ】内で公開されたコラムです。

 

【いきものAZ】いきもののスペシャリストに、いきものについてのコラムを書いていただく本企画。

毎年5月の最終水曜日はInternational Otter Survival Fundにより「World Otter Day(世界カワウソの日)」です。世界のカワウソの現状を知ってもらい、保全へと繋げるよう、世界中で様々なイベントが行われています。

そのカワウソについて知ってもらおうと今回は・・・、

カワウソの保全をすすめるため、日本アジアカワウソ保全協会(AOCSJ)を立ち上げ事務局長に就任、IUCN(世界自然保護連合)カワウソ専門家グループメンバーとして活動されている、岡元 友実子さんに 「カワウソ」について語っていただきました。

『カワウソ学入門① カワウソってどんな動物?』

みなさんこんにちは、日本アジアカワウソ保全協会よびIUCN-SSC Otter Specialist Group(国際自然保護連合 カワウソ専門家グループ)でカワウソの保全活動を行なっている岡元です。カワウソ学入門と題しまして、カワウソについてお伝えしていきたいと思います。

 

まず、カワウソって…どんな動物か説明できますか?えぇっと、確か、水かきがあって、川でダムとか作ってる動物…などと想像される方もいるかと思います。水かきがあることは間違いありません、でもダムを作るのはビーバー!他にも、外来種として日本の川辺でも見かけることがあるヌートリアと間違われる方も多いです。見た目の違いについては写真をごらんください(図1)。

図1:(a)ビーバー、(b)ヌートリア、(c)ユーラシアカワウソ

いかがでしょうか?こうして見ると結構違いがありますよね。それもそのはず、ビーバーとヌートリアはそれぞれげっ歯目のビーバー科とヌートリア科に属するネズミの仲間、カワウソは食肉目イタチ科に分類されるイタチの仲間です。また、ビーバーやヌートリアは草食動物ですが、カワウソは魚などを食べる肉食動物です。

ですが、彼らは全て水辺で生活するため同じように水かきなどが発達したのですね。このように、異なる系統の動物が生息する環境に合わせ似通った形態に進化することを、「収斂進化」といいます。

さて、一口に「カワウソ」といっても世界に13種ものカワウソが生息しており、世界中に広く分布していま(図2)。

図2:世界に分布する全13種のカワウソ

①カナダカワウソ、②オナガカワウソ、③オオカワウソ、④チリカワウソ、⑤ウミカワウソ、⑥コンゴツメナシカワウソ、⑦ノドブチカワウソ、⑧ケープツメナシカワウソ、⑨ユーラシアカワウソ、⑩ビロードカワウソ、⑪スマトラカワウソ、⑫コツメカワウソ、⑬ラッコ

 

こんなにカワウソっているんだ!と驚かれたのではないでしょうか?では、このうち日本の水族館や動物園で見かけることの多い2種類のカワウソをご紹介いたしましょう。

(1). ユーラシアカワウソ 英名:Eurasian otter

ユーラシアカワウソは、ユーラシア大陸を中心にアフリカ北部にまで分布しており、基本的に群れではなく単独で生活することが多い、夜行性の動物です(図3)。実は日本は、もともと「ニホンカワウソ」と呼ばれる固有のカワウソが生息しており、そのカワウソはユーラシアカワウソ、もしくは同種と非常に近いカワウソであったと考えられています。しかし、環境破壊や毛皮目的の乱獲により1979年高知県での目撃を最後に姿を消し、2012年に絶滅が環境省から発表されました。

図3:(a)ユーラシアカワウソ、 (b) ユーラシアカワウソの分布図

 

(2). コツメカワウソ 英名:Asian small-clawed otter

カワウソといえば、このカワウソが思い浮かぶ!という方も多いのではないのでしょうか?それもそのはず、2021年4月現在日本の動物園水族館において約250頭が飼育されており、巷にあふれるカワウソグッズもコツメカワウソをモチーフにしたものが沢山あるので、見かける機会が最も多いと思われます。コツメカワウソは東南アジア原産で、群れで生活し、主に昼間に活動する動物です(図4)。また、名前の通り爪が非常に小さく、カワウソの仲間のうち体が最も小さいことが特徴です。

図4:(a)コツメカワウソ、(b)コツメカワウソの分布図

 

カワウソ、知れば知るほど興味深い動物じゃないですか?

今回はカワウソに関する全てのことを詳しくご紹介することはできませんでしたが、他にも隠された魅力が沢山あります!ぜひ、みなさんも色々と調べてカワウソ博士になってくださいね!

 

『カワウソ学入門② 野生カワウソのホントの暮らし』

カワウソ学入門①では、カワウソはどういった動物なのか、世界にはどんなカワウソが生息しているのかを学びました。ですので、今回は更に踏み込み、野生のカワウソの暮らしやフィールド観察の方法についてご紹介したいと思います!

さて、まずは野生カワウソの「食べ物」について見ていきたいと思います。おそらく、すでにカワウソの主な食べ物は魚であることをご存知ですよね。しかし、実は魚以外にも、甲殻類、軟体類、鳥類、小型哺乳類、爬虫類等、多くの種類の獲物を食べることが明らかになっています(図1、図2)。

図1: オーストリアに生息する野生ユーラシアカワウソの食性(Sittenthaler et al., 2020)。RFO: Relative frequency of occurrence (相対出現率)、BIO: Relative biomass (相対バイオマス)

 

図2: 台湾に生息する野生ユーラシアカワウソが鳥を捕食する様子

 

カワウソが、こんなに沢山の生物を捕食するのかと驚かれたことと思います。このように、捕食可能なものを見つけたら幅広く食べる動物は「機会型捕食者(opportunistic predator)」と呼ばれます。

次に、みなさんに野生のカワウソの痕跡をどうやって探すのか?台湾の金門島に生息するユーラシアカワウソを例に、フィールド調査の方法についてお伝えいたしましょう。まず、カワウソは他の陸上哺乳類同様、隠れるのが上手いだけでなく主に夜に活動を行うため、いきなり野外で直接確認ことは非常に困難です。では、何を目印にすれば良いでしょうか?

−正解は、フンや足跡です。

例えば、こちらの湖に近づいてみると−

フンがありました!(図3)

図3:台湾金門島の水辺で発見された野生カワウソのフン

 

とっても立派なフンですね。まだ黒々としているので、それほど時間が経過していない(3日程度以内)比較的新しいフンであることが分かります。

 

カワウソはなわばりを持つので、マーキングのために岩やコンクリートの上といった目立つ場所にフンを残す事が多く、慣れれば比較的簡単に見つけることが可能です。そして、フンはカワウソ特有のニオイがあり、魚の骨やウロコなど捕食した生物の未消化物が含まれています。また時折タール便といって、腸の粘液などを主成分とする排泄物をすることもありますが(図4)、通常のフンと同じく強烈な!カワウソ臭を放ちます。

図4:台湾金門島で発見されたカワウソのタール便

そして、カワウソのフンはこうした池や湖だけでなく、小川沿いや橋の下、海辺でも見つかる事があります(図5)。

図5:(a)小川沿いのコンクリート護岸上、(b)橋の下

 

さて、足跡についても見ていきましょう!カワウソの足跡は、同じく水辺の泥や、寒冷地方であれば雪の上に残されていることもあります。特徴はイタチ科特有の5本指で、他に同地域にイタチ科の動物がいない場合は、4本指のネコやイヌと簡単に区別することができます(図6)。

図6:水辺の泥の上で確認された野生ユーラシアカワウソの足跡

 

いかがでしたでしょうか?野生のカワウソは、実は想像以上に色々な物を食べ、たくましく生活しています。もしいつかみなさんが海外でフィールド調査に出かける機会があれば、カワウソの痕跡がないか?ぜひ探してみてくださいね!

 

『カワウソカワウソ学入門③ カワウソが直面する危機』

さて、これまで2回にわたり学んできたカワウソ学入門ですが、彼らが大きな「危機」に直面していることはご存知でしょうか?

現在、世界に13種ものカワウソが広く分布していますが、実は北米に生息するカナダカワウソ以外、全て個体数が減少しているとIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストに記載されています。

一体、どのような問題が起きているのでしょうか?まずは、野生のカワウソを例に見てみましょう。これは、台湾金門島において、同じ場所で違う時刻に撮影された赤外線カメラの映像です(図1)。左にユーラシアカワウソ、右には大きな野良犬が2頭映っていますね。

図1:(a)ユーラシアカワウソ、(b)野良犬

 

こうした野良犬や野良猫は、噛むなど直接危害を与えるだけでなく、獲物の競合や伝染病の媒介など、カワウソにとって様々な悪影響を及ぼす可能性があります。実際に、2018年2月には野良犬に噛まれて重傷を負った老齢のカワウソが金門島のホテルに逃げ込み、スタッフに保護される事例がありました。

さらに、開発による生息地破壊やロードキル、漁業の釣り針や網によって死亡するなど、他にも沢山の脅威が存在しています(図2)。

 

図2:(a)台湾でカワウソの生息地周辺が開発される様子

   (b)シンガポールで釣り針が引っかかっているビロードカワウソの幼獣

 

では、個人的に飼育されているペットカワウソたちには、大丈夫なのでしょうか?−いえいえ、実は多くの問題が指摘されています。

これまでもご紹介してきたように、カワウソは「野生動物」であり、長い年月をかけて家畜化したウシ、ブタ、イヌやネコとは全く異なります。また数キロにわたる広いなわばりを持ち、魚やカニなど豊富なエサを食べ、種によっては群れで生活します。そのような生活環境を家庭や店舗で提供することは不可能に近く、カワウソブームの陰でコツメカワウソたちが犠牲になっていることが明らかになっています(図3)。

 

図3:カワウソカフェで客に触られるストレスにより脱毛症状を示したコツメカワウソ

 

さらに、以前まだ目も開いていない生後1ヶ月程度のコツメカワウソの幼獣が動物病院に持ち込まれ、脱水症状等により死亡した事例もありました。

なぜ、そんなに小さい幼獣が病院に持ち込まれたのでしょうか?実は、この個体は「密輸」により不適切な状態で日本に輸送された影響で、脱水症状を起こしていました。野生動物の密輸では、動物が声を出したり動いたりしないように、睡眠薬などで眠らせるケースが多く、密輸により野生個体数が減少することはもちろん、輸送過程でも多くが犠牲になっているのです。

こうしたコツメカワウソの違法なペット取引を防ぐため、2019年8月同種はワシントン条約附属書Iに記載され、同年11月に種の保存法に基づき国際希少野生動植物種に指定されました。しかしながら、それ以前に輸入された個体やその子供は登録さえすれば依然取引可能であり、こうした動物福祉にも関わる不適切な飼育問題は解決されていません。

上記のように、野生のカワウソには生息地破壊、家畜や外来種の脅威、漁網や釣り針、ロードキルなどの危機があり、ペットとして飼育されるカワウソの場合は密輸をはじめ、栄養不足やストレスなどの問題を抱えています。そして、ただ一つ共通すること、それはすなわちこれらの危機的状況は「全て人間が引き起こしている」ということです。

カワウソをはじめとする野生動物を救うためには、我々が一丸となって意識や行動を変えていくことが重要です。特に、現在起きているカワウソペットブームはメディアやSNSなどを通して引き起こされてしまいました。日本では、サンシャイン水族館をはじめ全国の動物園、水族館で多くのカワウソが飼育・展示されています。カワウソに会いたい!と思ったら、ぜひこうした施設に足を運び、保全に関する情報を共に発信いただけるよう、よろしくお願いします!

*今回ご紹介したコツメカワウソの個人飼育に関する問題については、以下の論文において詳しく紹介しています(英文)。ご興味のある方は、ぜひご一読ください!

Okamoto, Y., Maeda, N., Hirabayashi, M., Ichinohe, N (2020). The situation of pet otters in Japan- Warning by vets. IUCN Otter Spec. Group Bull. 37(2): 71-79.

https://www.iucnosgbull.org/Volume37/Okamoto_et_al_2020.pdf

【日本アジアカワウソ保全協会】  

HP: https://ocsj.asia 

FB: https://www.facebook.com/aocsj1979 

Instagram: https://www.instagram.com/otterconservationjapan/ 

 

※こちらは過去に【いきものAZ】内で公開されたコラムです。

関連する記事