|
東日本大震災が起きてから間もなくのことですが、独特な話し方をされる某戦場カメラマンが当時はよくテレビに出ていました。おもしろい人だと思っていたら、ちょうど新聞屋が彼の写真展のチケットをくれたので展示を観に行ってみました。会場へ入ると戦場の写真ではなく、街の風景が切り取られた紙の立体作品が多数展示されていました。見落としていたのですがチケットにはもう1人の出展者の名前があり、「ペーパーアーティスト太田隆司」と書かれていました。感動というのはこういうことを言うのでしょうか、戦場の写真を観たのかどうかすらも覚えてませんが、帰宅しても興奮が収まらず、翌日には100円ショップで1袋の紙粘土を買ってスケーリーフットを創っていました。あの時なぜ深海生物を創ったのか、今でもまだ思い出せていません。
深海家具は、時間が経つに連れてお部屋に溶け込んで調和するというよりも、いつまでも馴染むことのない異物であってほしいと思って作品をデザインしています。存在を忘れた頃にふと目に留まった時、驚いて一人でフ・・・フフフフ・・・と笑ってしまうような作品を創り続けていきたいと思っています。
自宅の狭い一室に作業場を設け、深海生物を産んだり育てたりする牧場のようなところで創っています。創作物と言えど、作られていく過程を見ているとそういう生き物のように見えてくるものです。生物が環境から生まれるように、環境は創作物にとっても重要な要素の一つです。おもしろいことに、どんな環境を創るかで創作物の育ち方に違いが出てきます。最近は、作品専用の道具なども自作するようになり、名前をつけてあげてがんばってもらっています。写真は「カップメンダコ」専用塗装台の「メンダコ・スティングレイ」です。ステンレスの串を刺してしますが、なんだかエイに似ていますでしょ。
暗くした玄関で深海生物の潜入をお待ちください。輸送中は暗黒ですので闇に閉ざされています。箱を開けましたらご自身も一緒に徐々に明るい環境へ馴らし、深海生物と共にエクストリームにお過ごしください。
深海をアートする2名のアーティストで組織される深海家具ブランド。深海では、熱水噴出孔生態系や超深海に特に興味があり、「チムニー」や「超臨界」、「ブラックスモーカー」などと聞くと噴出する。
深海をアートする2名のアーティストで組織される深海家具ブランド。深海では、熱水噴出孔生態系や超深海に特に興味があり、「チムニー」や「超臨界」、「ブラックスモーカー」などと聞くと噴出する。