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2019.12.13

作家さんに聞いてみた!③ 深海マザー編

2019.12.13

いきものグッズ専門ネットショップ「いきもーる」には、たくさんの個人作家さんたちのグッズがラインナップされています。
素敵ないきものグッズを生み出す作家さんたちは、一体、いきものに対してどれだけの愛を持ち、どんなことを想いながらグッズを制作されているんだろう…。ふと、そんなことを思った「いきふぉめ〜しょん」編集部員が、「いきもーる」でグッズを販売している作家さんへインタビューをおこないました!
作家さんたちが語ったグッズ制作への想いや、一番好きないきものへの愛を、シリーズでお届け。第3弾に登場していただくのは、『カップメンダコ』でおなじみの『深海マザー』さんです!

---はじめまして! まずは、簡単に自己紹介をおねがいします!

笑顔は氷河の崩壊のごとく現れる
深海マザー

深海マザー:グッズを制作して販売しています『深海マザー』です。マーケティングを担当する山田 里紗(代表)と、制作を担当する宇山 亮(クリエイター)の2名で、企画から販売まで一貫して行っています。

---お二人でブランドを運営されているんですね! どんなグッズを制作されているんですか?

笑顔は氷河の崩壊のごとく現れる
笑顔は氷河の崩壊のごとく現れる

深海マザー:雑貨を作っています。深海生物をモチーフに、マグネットのような一般的なものから、カップ麺のフタ押さえといった珍しいものまで、実用性を備えた様々なグッズを手がけています。

コンセプトは、「顔面を溶かす」です。作品を手に取ったとたん時間が静止し、理解した瞬間からこわばっていた顔がほころび氷河が崩壊するように溶けていく。そういう笑顔が生まれるようなデザインを心がけています。世の中をほんの少しでも明るく温かくできたらいいですよね。

---心がホッと温まるような素敵なコンセプトですね…! 「深海マザー」というブランド名で活動されているということは、やはり、いきもの中では深海生物が一番好きなんですか?

スケーリーフットをモチーフにしたマグネット群集
スケーリーフットをモチーフにしたマグネット群集

深海マザー:深海生物の中でも、『スケーリーフット』が好きです。深海の熱水噴出孔に生息しています。処女作のモチーフにもなりました。殻や鱗に硫化鉄を鎧のように纏う行動や、微生物を通して硫化水素を取り込み糧とする生態には驚くばかりです。
近年は『スケーリーフット』の研究者により、様々な発見があらわにされ始めています。温泉で蛇口などに成分がこびり付いている様子を見たことがあるかと思います。堆積したようなモコモコゴワゴワとしたフォルムですよね。スケーリーフットの硫化鉄の鎧は違います。熱水成分をただこびり付かせるのではなく、美しくコーティングする仕組みを持っているそうです。
『スケーリーフット』は特定の熱水域に依存しています。熱水噴出孔が創り出すチムニーは金属などの資源の塊です。熱水資源開発が始まると棲むところを失ってしまう可能性が高いので、『スケーリーフット』を絶滅危惧種に指定し、チムニーや他の生物もろとも未然に保護するという異例の措置が取られたというすごい話があります。とにかくすごいのです。

---『スケーリーフット』という名前を初めて聞いたのですが、熱く語っていただいてとっても興味がわきました! 次の記事のテーマ候補に入れておきます(笑) 自ら深海生物のグッズを作成しようと思われたきっかけはなんだったんですか?

ホウライエソの紙粘土作品
ホウライエソの紙粘土作品

深海マザー:アート作品との出逢いがきっかけです。新聞屋さんからある作品展のチケットをもらい、特に興味はありませんでしたが、暇だったのでふらっと行ってみることにしました。そこで見た緻密な紙の作品群に感動。よし、自分も何か作ってみようと思い立ったのが始まりです。
お金も知識もなかったので、まずは100円ショップで紙粘土を一つ買いました。元々、自然やいきものは身近に親しんでいたのでモチーフ選びに困ることはありませんでした。その中でも深海生物に惹かれた理由は、奇妙な見た目と強烈なキャラクター性がとっかかりやすかったからだと思います。

---紙粘土1つから制作を初めて、グッズ作家さんとして活動されているなんてすごいです…! 個人作家さんたちは、それぞれこだわりの環境でグッズ制作をされていると思うのですが、深海マザーさんはどんなところで制作されているんですか?

深海マザーさんの作業場。
深海マザーさんの作業場。

深海マザー:製作は自宅の8畳間で行っています。この空間で全ての作業をこなすことができます。メインは樹脂を利用した成形とエアブラシを使用した塗装作業です。換気だけはしっかりと対策してありますが、身体にいいとは言えない作業ばかりなので一人で部屋にこもります。
忙しくなるとパッケージングや梱包などの作業が隣の部屋や食卓にまではみ出して家族に迷惑をかけます。一度、自宅外にまではみ出して、初めて会った人にまで手伝わせてしまったこともあります。
新しい道具や素材は使ってみたいという好奇心がある以上どうしても増え続けてしまいますが、気に入った道具には雇用する感覚で名前をつけます。例えば、業務用の木工用ボンドを雇ったとします。名前は「ジェームズ ”コニシ” ボンド」君です。

---道具を雇用するって、面白い発想ですね! でも確かに、名前をつけると愛着が湧くからいいかも…! 私も、相棒のノートパソコンを名前で呼ぼうかな…。
話がそれてしまいました(笑) グッズ制作に対するこだわりや、意識していることを教えてください。

深海マザー:こだわりは、作品にいきものらしさを持たせることです。その種が持つ可愛さやかっこよさなどは特に重点を置いて表現するようにしています。敢えてちょっとだけ使いにくく設計することで、深海生物の不器用さといった雰囲気なども加えています。
それから、デフォルメ具合には特に気を遣います。いきものが好きな人にとって、いきものはありのままが美しいものです。しかし、グッズには制作面での制限があったり、エンターテイメント的な要素が必要だったりします。その間を上手く見極められないと、いきものファンから反感を買ってしまうこともあります。

---リアルさとデフォルメ具合のバランスは確かに重要ですね。

ダイオウグソクムシを掴むマグカップのダイオウグソップ
ダイオウグソクムシを掴むマグカップのダイオウグソップ

深海マザー:意識していることは、作品を手に取った人の表情を想像しながら作ることです。その表情と手元の作りかけを比較しながら作ります。その人の表情次第でデザインや形が変わり、ちょうどいい具合になれば自分も笑顔になってきます。これでいいのだなと納得すると楽しさが生まれ、それらも材料として機能すると考えています。現実にお客様が喜んでくれれば、自ずとモチベーションが上がり、また次の作品へと生かされていくのです。

---この意識が、きっと、「カップメンダコ」のようなヒット商品を生み出す秘訣なんですね。グッズの制作や販売をする中で、楽しい瞬間、嬉しい瞬間ってどんなときですか?

苦しみから解放された快感
苦しみから解放された快感

深海マザー:新しく完成した作品が発売され、作る苦しみから解放された時に、ああ楽しかったと思えます。ポイントポイントで楽しいというイメージではなく、全体を通してこれは楽しいことだったのだと後から感じます。快感と言った方が近いかもしれませんね。

---新しいものを生み出した達成感のようなものでしょうか…!? グッズ関連で、一番心に残っているエピソードは?

超深海甲殻類エンマノタナイスの標本
超深海甲殻類エンマノタナイスの標本

深海マザー:作品を通してたくさんの人と繋がることができるようになりました。イベントでお客様と雑談を交わしたり、お客様同士が仲良くしているのを見たりすると作っていてよかったと思います。
研究者さんから作品を必要とされることもあります。資料として貴重な標本を見せてもらえたり、秘密のエリアに案内してもらえたりすることもあるのですごく得した気分になります。
最近、作家冥利に尽きると思ったことがありました。深海とはほぼ無縁の人に作品をプレゼントする機会があったのですが、それをきっかけに深海の映像や情報を探るようになったと聞いた時は、入り口が作れたようで本当に嬉しかったです。

---ご自身が制作したグッズがきっかけになるなんて嬉しいですね! 逆に、大変なことや苦労していることはありますか?

深海マザー:長年苦労していることは、既存作品を維持しながら新作を出すことです。作品が増えることはよいことですが、既存作品の制作や管理に追われると前に進めなくなることがよくあります。未だにうまくいかない部分ですね。

---たしかに、「新作完成! はい、作業終わり」とならないのが、個人作家さんの大変なところですね…。
それではここで、『深海マザー』のグッズの中のイチオシを教えてください! 選べないとは思うのですが、記事化する関係で、今回は3点でお願いします。

深海生物をつかまえてきましたシリーズ
深海生物をつかまえてきましたシリーズ

深海マザー:たくさんあって難しいので、新しい順に紹介させていただくとします。
一つ目は、最新作の「深海生物をつかまえてきましたシリーズ」です。定番グッズのマグネットで、モチーフには深海生物の中でもマグネットらしい姿かたちをしたいきものを選んでいます。優しさや柔らかさといった親しみやすさを表現しました。
水族館のミュージアムショップで販売されることを想定してお土産風のパッケージに包まれています。名入れもできます。例えば「サンシャイン水族館で」を加えるとご当地グッズになります。
今のところメンダコ3種のみです。熱心な深海生物ファンはこのラインアップを見て、どこの水族館へ向けられているのかわかってしまうのではないでしょうか。種類は徐々に増やしていく予定です。

デメニギスタンド
デメニギスタンド

深海マザー:二つ目は、「デメニギスタンド」です。深海魚デメニギスをモチーフにしてカードスタンド&ペンスタンドを作りました。商品化への道のりが約10ヶ月と最も長く、その割に最も鳴かず飛ばずだったある意味ダントツの作品です。そういうこともあります。
高級なホテルのフロントに置かれ、そこでお客様がチェックインを済ます際にペン立てになっていたらおもしろいと思ってデザインしました。どうりで需要がないわけです。
また別売りで、「デメニギスの目」という無用途な商品があります。購入者さんに使い道を問い掛けるというコンセプトですが、デメニギスタンドはこの目の使い道を自分なりに回答した作品でもあります。

カップメンダコシリーズ
カップメンダコシリーズ

深海マザー:最後は、「カップメンダコシリーズ」です。カップ麺にお湯を入れる際に紙蓋と容器の間にできる隙間を密閉するグッズです。カラーバリエーションも豊富で、暗闇で光る蓄光タイプや、お湯の温度で色が変わるタイプが人気です。
今や深海マザーのエースということもあり、改良を加えたり生産性を上げたりと注力することができました。必然的に品質が上がり、自然とバリエーションが増えていくのを見ていると、まるで生きているかのように見えてきます。とてもよい循環ができている作品と言えます。

---お話を聞いていて、初めて「カップメンダコ」の存在を知った時、こんな便利なものがあるのかと感動したのを思い出しました…!
『深海マザー』のグッズは、どんなシーンで使ってもらいたいですか?

深海マザー:会社やご家庭での日常のワンシーンとして使っていただきたいです。触れたり眺めたりして愛でながら楽しんでみてください。人に見つかると変な目で見られるかもしれませんが(笑)

---これからの活動についてお伺いします。今後、制作・販売を予定されているグッズについて可能な範囲で教えてください。

カップメンダコ ミニシリーズ発売
カップメンダコ ミニシリーズ発売

深海マザー:現在「カップメンダコ ミニシリーズ」を作っています。カップ麺のミニサイズに対応するフタで、こちらの記事が公開される頃には既に発売されているかもしれません。

ハオリ棒の試作品
ハオリ棒の試作品

深海マザー:その次は「ハオリ棒」です。熱水噴出孔に生息するハオリムシという生物をモチーフにした伸びる指示棒を作りたいと思っています。マニアックなファンもうなずくような作品を、人気シリーズと平行して作っていきたいです。

---「カップメンダコ」にミニが登場するんですね…! 深海マザーさんが、作家として挑戦したいことや、将来の夢は?

雪で作ったダイオウイカのアート。すごいっ!!!
雪で作ったダイオウイカのアート。すごいっ!!!

深海マザー:創り続けるということにはずっと挑戦していたいです。時代や状況に左右されながらではなく、自分の世界観や表現欲求に従っていつまでも力強く創っていけたらと思っています。
夢は、世界をひっくり返せるようなアーティストになること。そして最後に、ああしょうもないものを作ってきたな、でも自分すごいなと言って死にたいです。

---これからも、独創的でおもしろいグッズをたくさん生み出してください! まもなくインタビューも終わりなのですが、「いきもーる」でいきものグッズを販売されている作家さんということで、『サンシャイン水族館』にまつわるエピソードを教えていただけますか?

青いイルミネーションの空間イメージ
青いイルミネーションの空間イメージ

深海マザー:サンシャイン水族館へ最後に遊びに行ったのは30年前のことです。当時、私は南房総市に住んでいました。遊び場といえば専ら家から歩いて2分の磯でした。
冬のある日、上京していた姉に水族館へ連れて行ってあげると言われ、10歳の私は無理やり東京へ連れて行かれました。水族館なら近くの鴨川シーワールドで十分だったはずです。
初めての東京でした。池袋の人通りの多い真っ直ぐな道を覚えています。大きな建物に入ってしばらく歩くと青いイルミネーションで飾られた幻想的な空間がありました。私はテンションが上がり、水族館へ行く前からキャッキャとはしゃいでしまいました。
しかし実はこの時、私に黙って東京へ転校させる計画があり、機嫌を取ろうという魂胆だったのです。楽しんでいる私を横目に姉はさぞシメシメと思っていたことでしょう。私に東京の名所を見せてあげようという純粋な気持ちが少しはあったとは思いますが、まもなく私は故郷を捨てることとなりました。

---オチが…(笑) ぜひ、リニューアルした『サンシャイン水族館』へ、遊びに行ってみてくださいね!
それでは最後に、この記事を読んでくださっている方々へ、メッセージをお願いします!

深海マザー:応援してくれるお客様には感謝しかございません。新作を出すことが最大で最高のイベントだと思っています。これからもよろしくお願いいたします。
また、何もなかった私が今、取材を受けています。何かを始めて続けていれば何かが起こるという事実に希望を見出してもらえたら嬉しいです。長々と読んでくださりありがとうございました。

---深海マザーさん、ありがとうございました!

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