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2021.03.19

宇宙よりもたどり着くのが難しいと言われる未知の領域「深海」ってどんなところ?

投稿日:2021.03.19 更新日:2022.03.22

地球最後のフロンティアなんて呼ばれることもある「深海」。地球上で唯一人間が到達していない場所で、なんと、宇宙よりもたどり着くのが難しいと言われています。
人間が簡単にたどり着けないのは、特殊な環境のせい。今回は、未知の世界「深海」について、詳しくご紹介していくことにします。

深海とは?

海は、深さによって、いくつかに区分されます。

【深さ:区分】
0m~200m :表層
200m~1000m :中層
1000m~3000m :漸深層
3000m~6000m :深層
6000m以上:超深層

深海とは、一般的にこの表の中層から下、水深200mよりも深い水深帯のことを指すことが多いです。どうして水深200mが境目なのかというと、植物プランクトンが太陽光で光合成できる限界の深さが水深200mだからだそう。

なんと地球上の海全体のうち、約95%が深海。海の割合が、地球全体の約70%ですから、地球の約66.5%が深海ということになります。地球の半分以上が深海なんです!
つまり、地球の約6.5割の場所は、まだほとんど解明されていない未知の領域ということになります。

海の最も深い場所は、マリアナ海溝のチャレンジャー海淵で、その深さは10,920mです。
海溝とは、漢字の通り海の溝のこと。深海の海底には、海溝のほか、陸上と同じ様に、山や谷、崖などが存在しています。

ちなみに、日本は4つのプレートの境界に位置している島国のため、周辺に「千島海溝」「日本海溝」「伊豆・小笠原海溝」「南西諸島(琉球)海溝」と4つの海溝があり、深海大国なんだそう。水深5,000mよりも深い海水保有体積は世界1位なんですって!
深海って、どこか遠い世界のような気がしていましたが、実は、日本のすぐ近くに広がっているんです。
2020年11月に、サンシャイン水族館で行っている、水中ドローンを使った深海調査に同行させていただきましたが、この深海調査も陸地からすぐ近くの、駿河湾内で行われました。

▶︎水中ドローンで深海を探索! 深海調査同行レポート!はこちら

では、深海とは、一体どんな環境なのでしょうか? そこには、陸上とは全く異なる、太陽光の届かない、暗く冷たい、そして、高圧の世界が広がっています。

暗い世界

深海の入口である、水深200m地点で、太陽光は海面の0.1%しか届かないそうです。深くなるにつれて、さらに光が届かなくなっていき、人間は、水深200m~400mの地点で全く光を感じられなくなると言われています。
そして水深1000mより深くなると、全く太陽光の届かない真っ暗闇の世界になります。

冷たい世界

水深300m付近までは、浅い海と同じく水温10℃~20℃程度ですが、そこからは深くなるにつれてどんどん水温が下がっていき、水深1000m地点では5℃以下に。ここから先は、さらに深くなっても1℃~4℃とほぼ一定だそうです。

高圧の世界

地球上では、水深が10m深くなるごとに、水圧が1気圧ずつ高くなっていきます。そのため、水深1000m地点で約101気圧となり、1㎡あたりに1000tもの力がかかることに。
人間は、肺などに空気をたくさん保持していて、水圧による影響を受けやすく、仮に生身で潜って深海にたどり着けるとしても、臓器がペシャンコになって息ができなくなってしまいます。そもそも、そんなに深くまで泳いで潜れませんが…。
この高い水圧のため、人間は深海に辿り着くのが難しいとされています。人間が深海のより深いところに行くには、高い水圧に耐えられる潜水艇が必要になります。

どうやって深海を調査するの?

サンシャイン水族館所有の水中ドローン。FullDepth(フルデプス)社のダイブユニット300

では、人間が簡単にたどり着けない深海は、どのように調査するのでしょうか?
もっとも一般的なのは、探査機を利用した調査です。いきふぉめ〜しょん編集部が同行した、深海調査でも、「FullDepth(フルデプス)社」の水中ドローンと定点カメラを利用しました。
しかし、こういった調査には限界が。スポットごとにしか調査ができないため、1つのエリアの調査にすらものすごく時間がかかります。

先ほど、人間が深海に辿り着くには、高い水圧に耐えられる潜水艇が必要とお伝えしましたが、専門の調査機関では、有人の潜水艇による調査が既に行われています。
しかし、深海の深くまで潜れる潜水艇は世界でも数隻しかなく、地球の約66.5%を占める深海全体を調査するには、まだまだ時間がかかりそうです。

深海には面白い生き物がいっぱい!

鋭い歯がびっしり生えている「ミツクリザメ」

地上とは全く異なる環境のため、深海にはユニークな生き物たちがたくさんいます。

例えば、光を発する器官を持っていたり、弱い光でもキャッチできる様に目がものすごく大きかったり、逆にものすごく小さな目で視覚に頼らない生き物もいます。
また、食べ物が少ないので、確実に獲物を仕留めるために大きな口に、鋭い歯が生えた生き物もいます。

一見、怖かったり、不気味に見えたりしますが、深海という特殊な環境で生き延びるために進化した結果、このような見た目になったと考えるとだんだん愛らしく見えてくるから不思議です。

深海生物については、「不気味? ちょっと怖い? 深海生物たちの不思議に迫る!」の記事で詳しく紹介していますので、併せてチェックしてみてください。

▶︎不気味? ちょっと怖い? 深海生物たちの不思議に迫る!はこちら

さらに、深海にある「熱水噴出孔」の周辺には、「化学合成生態系」と呼ばれる特殊な生態系が広がっています。
「熱水噴出孔」とは、マグマによって温められた200℃~400℃にもなる熱水が噴出しているところ。この熱水には、硫化水素やメタンなどの有毒ガスが含まれているのですが、「熱水噴出孔」の周囲には、それらを利用してエネルギーを作り出す微生物が存在し、その微生物が作り出すエネルギーで生きるゴエモンコシオリエビやシンカイヒバリガイなどの生き物たちが生息しています。
「熱水噴出孔」は、地球上で最初の生命が誕生した場所とも言われており、「熱水噴出孔」の調査や研究は、生命の起源を知ることにつながるとも言われています。

深海にもたどり着く海洋ゴミ

砂浜に流れ着いたプラスチックゴミ(イメージ)

人間が簡単にたどり着くことのできない深海ですが、実は、いとも簡単にたどり着いてしまったものがあります。
それは、人が海に捨てたゴミです。
海の最も深い場所、マリアナ海溝のチャレンジャー海淵でも、プラスチックゴミが発見されています。

プラスチックゴミは分解されにくいため、長い間海の中を漂い、やがて深海の海底へと沈んでいくのでしょう。このまま海洋ゴミが増え続ければ、いずれ深海もプラスチックゴミだらけになってしまうかもしれません。また深海プラスチックには沈むものだけでなく、中には細かく砕けて微生物や海洋生物たちのエサとなり、最終的に、人間の口にも入ってしまう場合もあります。
この記事を読んでくださっている方は、少なからず、海の生き物や深海に興味をお持ちの方だと思います。
取り返しのつかない事態になる前に、一人でできる小さなことから少しずつ、環境問題への取り組みを始めてみませんか?

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